魚と寝る女(原題:섬(島)・The Isle)

dough2006-02-03


インターネットテレビGyaoで視聴しました。3月1日まで公開されてます。
(最近あの手この手で韓国映画を見ようとしているわたし・・・)
鬼才キム・ギドク監督の2001年の作品なのですが、まるで人間が魚のように描かれた、
「絵みたいな映画」だと思いました。


世の中から隔離されたような不思議な釣り場(湖?にぷかぷかと家つきの舟が浮かんでいる)の
管理人ヒジン(ソ・ジョン)は、船で釣り人達の元をまわり、
昼はコーヒーやラーメンなどの飲食物を、夜は自分の身体を売って生活しています。
(この時点でわたしは相当やられました・・・)
ある日、わけアリの過去を持つ男(キム・ユソク)が、死に場所を求めて釣り場にやってきて、
彼がひとり泣いているところを目撃してしまったヒジンは妙に彼が気になって・・・
という感じでストーリーは始まります。


このヒジンという女性、ほとんどすっぴんに極太くっきり眉毛という
かなり野性的な風貌なのですが、ニコリともせず、どういうわけか一言も喋らないのです。
わたしはきっと彼女もわけアリの過去を持っているのだろうと感じたのですが、
言葉がないことによってかえって燃えるような感情が表れていて、
ただそこに佇んでいるだけなのに、画面いっぱいに妖艶なオーラが満ちていました。
(「ペパーミント・キャンディー」に出てきたミス・リーと同じ女優さんとは思えない・・・)
途中からは彼女の強すぎる愛(執念?)が正直恐ろしくてたまらないのですが、
逃げようとした彼を釣り戻すために、彼女が自ら「魚になってしまう」シーンがあまりにも痛々しい!!
心も身体も苦しくなります。あんなに怖かった彼女は、いかにも脆い、ただの女でした。


それでも、水はただひたすら美しく、汚い人間達を包みこんでいきます。
そうして迎える幻想的なラストシーン。実はわたしは今でもちゃんと解釈できていないのですが、
それでいいのだと思いました。この映画は、あれこれ分析したり自分の身に置き換えて考えてみたり、
ましてや主人公に感情移入してどっぷりはまるような種類のものではなく、
美術館に監督と俳優さん達によって提示された「作品」として、
ちょっと足を止めて眺めるような距離をもって対峙するべきものなんだろうと感じました。
それくらいの存在感がある作品です。今も多くの人に鑑賞されるのを静かに待っています。
(ちなみにR-18ですが、一部のシーンを除いてはそれほどおどろおどろしくはありません・・・
 でもヴェネチア国際映画祭で上映された時は失神者が出たそうです。)