最近読んだ本たち

dough2005-12-26


こっちに来て、父の職場の図書コーナーで適当に本を借りたりしています。

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

10月に突然映画の試写会を見に行ったので、その後に原作を読みました。
映画よりも清顕の性格というか心情とかがわかりやすかったように思います。
あと映画はこの話だけで完結だと思うけど、
本作はまだあと3話あるわけで、やっぱり序章に過ぎないという印象も受けました。
この続きを読んでみたいと思いつつ、ここでは手に入らないのでまた今度。

正直、ホンジュラスの部分以外は斜め読みだったのですが・・・
ざっと歴史や産業のことが勉強できて非常によかったです。
これを読めばとりあえずちょっと知ったかぶりでこっちの人と会話もできそうというか。
先月の総選挙の時なんかも、二大政党のことがわかっていたのでいろいろ理解しやすかったです。
しかし"banana republic"がホンジュラスのことだったと知ってちょっとびっくり。バナリパ。

日本外交官、韓国奮闘記 (文春新書)

日本外交官、韓国奮闘記 (文春新書)

ジュネーブに住んでいた時、少しだけど縁があった方の著作。
しかもテーマがテーマであっただけに、喜んで手にとったものの・・・
なかなか読み進めるのに時間がかかってしまった一作でした。
日韓双方の現状と問題点がさほど難しくない言い方で述べられているところが
すごくいいと思うのですが、構造的な理解を維持するのが難しかったというか・・・。
(単にわたしがこういう文章に慣れていないだけかも)
歴史認識や教育に関する日本側の問題点には思わず納得でしたが、
韓国側の問題点に関しては今のわたしには判断しかねるので、
もっといろんな方の意見や著作を知っていくしかないかなと思います。
しかしソウルでこういうお仕事に就ける人が羨ましいと今更ながらに思ってしまいました。

模倣犯〈上〉

模倣犯〈上〉

模倣犯〈下〉

模倣犯〈下〉

宮部みゆきの長編小説。連載モノであったために、作品にまとまると若干まわりくどい印象もあるのですが、
第一部は主に被害者の立場から、第二部は加害者の立場から、そして第三部は主に第三者の立場から
事件の全貌が明らかになっていく様子が展開されるという構成でどんどん読み進めることができました。
凶悪事件の被害者とその遺族に対する社会的配慮というテーマは、もっと語られるべきことだと思うし、
自分だったらどうだろう、とかしばらく考えていました。
この小説の中のおじいちゃんみたいには生きられそうにないけど。

夢にも思わない (中公文庫)

夢にも思わない (中公文庫)

こちらも宮部みゆきの小説。少年の姿に、「模倣犯」に出てくる少年とかなり重なるところがありました。
ストーリー的にはちょっと現実的じゃないかもと思う部分もありますが・・・
まあそれはそれでよいのかもしれません。タイトルが好きだなと思って手にとった一冊でした。

チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)

チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)

日本で公開された新しい映画を見たので、まずは日本語訳の方を妹に借りて読んでみました。
映画よりももっとナンセンス色が強くて、ちょっとエドワード・リアの作品を思い出しました。
(挿絵もなんか雰囲気が似てたし・・・)今度は英語原作と、古い方の映画を見るとします。
(別にそんなに好きな作品というわけではないのですが)

マンガ金正日入門 北朝鮮将軍様の真実

マンガ金正日入門 北朝鮮将軍様の真実

図書コーナーで発見して思わずわあ!と言ってしまったもの。
韓国で宥和政策がとられるようになって「金正日を刺激してはいけない」ということで
発禁になった書物の中のひとつです。日本で発行されるにあたり、
冒頭に拉致事件の章が加筆されていました。読んでみると、金正日のことだけではなく、
北朝鮮の歴史や体制についても詳しく書かれていました。
マンガですらいまいち理解できない部分が多かったので、専門書で読んだりしたら大変なんだと思います。
かなり表現は柔らかくなっているのだと思われますが、それでも気分が悪くなるようなところも多くあり、
隣の国にいるこの独裁者をどうにかしなくては日朝の国交が正常化されてもね・・・
という気分になったことは事実です。

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

友達が文庫本を置いていってくれたので、再読してみました。
元新聞記者の作者が書いたものらしい、硬派な世界観が好きだなと改めて思いました。
「日本中が感動したベストセラー」っていう煽り文句があんまり似合わないのですが。
それにしても、映画を見てしまうと、もはや梶総一郎は寺尾彬としか思えない。
それくらいはまり役だったなあと思いました。

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

わたしは江國香織の女性版(rosso)から読んだのですが、こういった作品にほとんど興味がなかったため、
これが辻仁成との合作?であることをあとがきで初めて知りました。
前に「サヨナライツカ」を読んで正直辻仁成に辟易していたのですが、
なんだか乗りかかった船という気もして男性版(blu)の方も読んでみました。
結果・・・うーん、女性主人公あおいがミラノで送る緩やかな生活と心の動きには
共感できるものがありましたが、その他は「ふうん」という感じで・・・。
前に友達が教えてくれた、「何もしないでいることの悪いことは、記憶が後ろに流れないことだ」
という一文を見つけたときは、あおいの心情とも重なって、ほんとにそうだねえなんて思ってしまいました。
あと、「わたしはあの頃誰の目から見ても不機嫌な店員だったのに、彼はそのわたしがいいと言った」
みたいな台詞も印象的でした。確かに、あのアメリカ人の男性は、あおいの何が好きだったのか、
全然わからなかった。あおいには、ぜひ何にも魅力のない女になっててほしかったのに・・・それが残念。

人質カノン (文春文庫)

人質カノン (文春文庫)

宮部みゆきの短編集。どれも都会の問題を背景としたなかなかおもしろい作品でしたが、
中でも特に「十年計画」と「生者の特権」が印象に残りました。

あんなひどい人間と、この世の中に、十年も同居していられないって、ね。五年で充分じゃないか、いや三年で、とかね。いちばん気が急いてたときは、免許とったらすぐにやってやろうとまで思ってました。(中略)
うんと優秀な、腕のいい運転手にならないといけなかったんです。まず、車で人を轢いて殺すっていっても、わざとやろうとしたら、容易なこっちゃないんですから。テクニックを身に付けておかないとね。(中略)
それと、いざその遠大な計画を実行に移して死亡事故を起こしたときには、情状酌量をいっぱいしてもらいたいでしょ。

どうして死ぬのかと問われたら、明子はきっぱり答えるだろう。我慢ならないからだと。憤懣やるかたないからだと。(中略)
それしか手段はないか? ないと、明子は思うのだ。井口の人生に、明子という消えない痕跡を残してやるためには、彼みたいな勝手な男が、この先なんの罪悪感も感じずにのうのうと幸せに生きてゆくことが、どうして許せよう。
だから死ぬのだ。この先、また別の人が現れれば前のことなんかきれいに忘れるよとか、男はこの世にひとりしかいないわけじゃないとか、死んだらおしまいだよとか、当たり前のことを言って止めてもらっちゃ困る。
そんなのわかってる。わかってるけど、明子に別の人生が訪れたところで、この腹立ちは消しようがない。この裏切りで受けた傷は癒しようがない。明子の真心や、誠意や、夢や希望や真実を、言葉ひとつでひょいと脇に退けることができると思ってはばからなかった井口への怒り。こればかりは、彼に直接ぶつけてやるしか、解決のしようがないのだ。だから明子は死ぬのである。仕返しのために、復讐のために明子は死ぬのである。悲しいから死ぬんじゃない。

宮部みゆき、すごいんですけど。

彼女の嫌いな彼女 (幻冬舎文庫)

彼女の嫌いな彼女 (幻冬舎文庫)

元々OLだった唯川恵が描く35歳の瑞子と23歳の千絵にはそこそこリアリティがあって
けっこうおもしろかったです。ラストも痛快だし。ざまーみろ。
そういえばわたしは年齢的に瑞子と千絵の中間くらいなのですが、
瑞子みたいに仕事に面白みは感じられないし、かといって千絵ほど割り切れもしないし、
なんとも中途半端なものだなあ・・・と思いました。

いまを生きる (新潮文庫)

いまを生きる (新潮文庫)

高校生の時、クラスの劇でこれを上演しました。
そのとき、映画も見たはずだったのですが、この原作はその時の印象と違う気がしました。
映画はなんていうかさわやか感動系。原作はもっと生々しい。
その分ちょっと救われましたからまあいいんですけど。
しかし翻訳もので人の名前なんかが出まくる話は、文面がカタカナで満ち溢れてしまうので
読みにくいですね。英語の方がいいのかもしれません。

天国までの百マイル (朝日文庫)

天国までの百マイル (朝日文庫)

こちらもどこかで聞いたことのあるタイトルだったので読んでみました。
お母さんやマリさんという女性の「愛に生きる」姿が印象的で、泣いたりはしませんでしたけど、
しみじみしました。また、作品中の会話のテンポがとても好きでした。
「くすぶりがもういっぺん目を持つのはね、早くて二年、遅くても三年」ってマリさんの言葉、
ほんとうかなあ。